2003年、東京に進出。
恵比寿の辺鄙な裏通りの地下1階に「TOOTH TOOTH TOKYO(※1)」を作った。
フランス地方料理をベースに、「ワイルド&パワフル」な「がっつん!」料理をベースにした100席ほどある大箱レストランバー。店舗のデザインはフィンランドのデザインチームと僕たち自社デザインチームとのコラボレーションだ。
僕たちのアイデンティティーであり戦略である「デザイン」においては、その機能を早くからデザイナーの集団である「デザイン企画室」を社内に置き、食を取り巻くすべてのものを内製化している。社外の面白いデザイナーや、クリエイターとコラボレーションをすることはあるが、基本的に店舗デザイン、ロゴ、メニュー、ポップ、ポスター、等々、グラフィックから立体まで自社でクリエイションしている。
「TOOTH TOOTH TOKYO」では、古材の木床に鉄の網カーテン、イギリスのアンティークチェアに「フィリップ・スタルク(※2)」の巨大なスタンドライト、原寸大の馬のオブジェに2階ビルくらいの高さの木枠の鏡と、緊張と緩和、静と動、古と新、などの対比を楽しんだ。〝洞窟内にできた秘密クラブ「フューチャー・ビストロ」〟がコンセプトイメージだった。
ただそれだけ聞けば、「デザイナーズレストラン(もはや死語かも・・)」や、「テーマパーク・レストラン」など、物語性をコンセプトにしたような飲食店と同一視されかねない。
ニューヨークのレストラン王、ダニー・マイヤー氏いわく、「店はテーマパークではない。建物、近隣、それから市全体とも調和した存在でなければならない。」
僕も同感だ。
違った角度からの話をしよう。
その「TOOTH TOOTH TOKYO」には、V.I.Pルームがあるのだけれど、部屋を守る守護神として等身大のフィギュアが睨みをきかせている。あの映画「スター・ウォーズ」の銀河帝国軍のストームトルーパー(※3)だ。
ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」を子供騙しの漫画と感じるのか、神をも困惑させる一大叙事詩として鳥肌を立てるのか。
その手の映画では、あの元祖モンティーパイソン!テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」、フィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?」をもとにしたリドリー・スコットの「ブレードランナー」、今世紀最狂のカルト作家、ウィリアムズ・バロウズ(※4)原作、デヴィット・クローネンバーグの「裸のランチ(The Naked Lunch)」など、何度見ても最高の気分にさせてくれるものがある。
コンピューターグラフィックが進化した現在では、これらの映画よりも映像的には高度でリアルな表現が可能になっているが、これらの作品はただの娯楽性を超えた〝何か〟がある。
その作品に〝何か〟があるかないかの境界線は、両刃(もろは)の剣である、「夢」「情熱」といったお金儲けを無視した、「誠実な狂気」が宿っているか否かではないだろうか。利益は、店や会社や作品が存続するために必要だけれども、それ自体が目標ではないのではないか、と思う。
その〝何か〟がある店を作りたいと常々思っている。
商売人としては失格でしょうか・・・?